2005年4月に本邦で糖尿病学会を含む関連8学会合同でメタボリックシンドローム診断基準が提唱されました。内臓脂肪の蓄積が、必須項目になっていることが特徴で、その指標としてウエスト周囲径が用いられています。臍レベルの腹部CT断面像で内臓脂肪面積100p2に対応するウエスト周囲径が、日本人では男性で85p、女性90pで、それ以上を腹部肥満と判定し必須条件とするものです。高トリグリセリド血症(≧150r/dl)かつ・または低HDLコレステロール血症(<40r/dl)、高血圧(≧130かつ・または≧85oHg)、空腹時高血糖(≧110r/dl)の3項目のうち2項目以上あればメタボリックシンドロームと診断します。
メタボリックシンドロームの診断基準については、WHO、EGIR(European Group for the
study of Insulin Resistance)、NCEP ATPV(National Cholesterol Education Program)、IDF(International
Diabetes Federation)が、それぞれの診断基準を発表しています。しかし、このようにさまざまな診断基準があることは、臨床的にも混乱を招き、さらにメタボリックシンドロームの研究にとっても国際的に比較検討しにくいことは明らかです。そこで、IDFでは、臨床でも疫学研究においても適すると考えられる”プラチナ・スタンダード”の診断基準を提唱しました。基本的な内容は変わっていませんが、今まで検討されてきた前提条件であるウエスト周囲径は、南アジアや中国と同等の基準におき、日本人の男性で90p、女性で80p以上を腹部肥満と判定しています。付随する条件では、@高中性脂肪血症(≧150r/dl)、A低コレステロール血症(男性<40、女性<50r/dl)、B高血圧(≧130かつ/または≧85oHg)、C空腹時高血糖(≧100r/dl)と空腹時血糖の基準が引き下げられていることが特徴です。IDFの”プラチナ・スタンダード”では前提条件と2-4項目の付随条件を満たしたものをメタボリックシンドロームと診断します。
わが国では2008年度から特定検診・保健指導(40〜74歳)が開始されました。これは、日本のメタボリックシンドロームの診断基準を基本として、肥満に重点をおき、成人病(生活習慣病)を抑制するため保健指導を行うものです。日本人において、メタボリックシンドロームと成人病との関係、そして、どの基準が日本人に適しているかは、今後これらの結果より明確になていくとおもわれます。 |