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成人病(生活習慣病)Q&A

Q:

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動悸の既往がある高齢者が手術に臨む際の注意点を教えて下さい。
A:
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   「高齢者」といっても最近の75歳以上の方は本当にお元気な方が多いようです。一昔前には高齢者と言ったら無条件に手術はせず保存的治療を選択したこともあったようですが、今は80歳過ぎても結構、侵襲の強い手術をされるようになりました。当院のICU・HCUでも手術を受けた後にお元気に一般病棟へ転出される80歳以上の方がたくさんいらっしゃいます。
   担当の先生方もご高齢の患者さんに対しては手術前には特に念入りに合併症のチェックをされていることと思います。循環器系の心電図、胸部レントゲンはもちろん心エコー検査まで行って手術の準備を進め特に異常所見がないことを確認。ところが、手術の説明を終えたところで「何かご質問ございますか?」と患者さんにお尋ねしたら、「実は最近動悸が・・・」などと言われることも稀ではありません。検査結果を見直しても心電図に不整脈はなし。手術の説明も終わって同意も得て明日は手術。そんな時、不整脈が周術期に増悪して重篤な合併症をおこさないかとても気になるのではないでしょうか。
   不整脈の予後は原因となる基礎疾患により左右されます。手術前に虚血性心疾患、心筋症、弁膜症、ブルガタ症候群などの遺伝性不整脈の可能性をもう一度確認するのが重要です。逆に、これらの基礎心疾患がない場合には、周術期に不整脈が致命的になることはほとんどありません。高齢になるに伴い心房細動や洞不全症候群、房室ブロックなどの伝導系の異常が増加します。術前検査として行った安静時の心電図では見逃されていたイベントが重症病棟のモニター心電図で偶然に判明することもありますが、基礎心疾患がなければ比較的容易に対処することが可能です。
   循環器内科・集中治療医との連携体制など周術期に不整脈がおこってしまった場合の対処法を準備し、医療スタッフの訓練を行っておくことも必要です。徐脈により血行動態が破綻すればペーシングを要しますし、頻脈性不整脈、特に心室性不整脈では致死性となりうるcardioversion や抗不整脈薬の投与も必要になるかもしれません。
   いずれにしても、高齢者の動悸の背景に心疾患がないか把握し、不整脈が発生した場合の対処を予め十分に考えておくことが手術と手術期管理の成功大切なことだと思います。

参考文献:循環器病の治療に関するガイドライン(2007年度合同研究班報告)
               非心臓手術における合併心疾患の評価と管理に関するガイドライン(2008年改訂版)
 (筑波大学附属病院 循環器内科  井藤葉子)

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