高齢者に多い膝の痛みですが、「年のせい」と外来で右から左へ受け流してしまう場合も少なくないかもしれません。変形性膝関節症は自覚症状を有する患者数が日本国内で約1000万人、潜在的な患者数(X線診断による患者数)で約3000万人と推定されています。特に高齢者になればその頻度は高くなります。しかし、すぐにでも整形外科医にコンサルテーションが必要な疾患を見逃さないように注意して診てください。ここで鑑別にあげたい疾患は化膿性関節炎、痛風、偽痛風、骨壊死、不顕性骨折(骨粗鬆症)、悪性腫瘍骨転移などです。そのためには以下のことをやってみてください。
@ まず膝を見てみましょう
A 痛いところを押してみましょう
ズボンやストッキングをあげて膝を実際に見てください。発赤、腫脹、変形がないか、など。発赤、腫脹があって熱感を伴えば化膿性膝関節炎を疑います。ちりょうが遅れると敗血症や骨髄炎など重篤化、長期化します。痛風や偽痛風などの結晶誘発性関節炎は痛みが強く腫脹(水腫)もみられますが、一般に発赤はあまりみられません。
変形性関節症の場合、関節裂隙に圧通があります。日本人は内反変形(O脚)が多く内側に圧痛がある場合がほとんどです。外側に触れると裂隙の隙間がわかりやすいでしょう。その他、骨壊死や不顕性骨折、骨転移であればその部位に痛みがあります。前から順に押してみて、痛みの部位が関節裂隙でない場合はこれらも疑います。圧痛点を記載しておくとわかりやすいかもしれません。
さらに、X線をオーダーする場合は是非とも立位での膝関節正面像がお勧めです。荷重すると関節裂隙の幅(つまり軟骨の厚さ)をみることができ変形性膝関節症かどうかの診断精度がぐっと上がります。
これらを実践してコンサルテーションすれば整形外科医から感謝、感心されること間違いなしです。 |